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用途の確認は大事

売物件の電話問い合わせの際に、私から

「どのような目的でこの土地を使おうとお考えですか?自宅の建築ですか?」等と聞くようにしています。

 

この質問の意図するところは、土地や建物の使い道(用途)によって制限が変わったり、

税金が変わったりするので、取引の全体像を描くのに必要な情報だからです。

 

用途を質問すると明確に答えられない方がけっこう多いです。

用途は後で考えることにして、とりあえず土地だけ欲しいのか?

冷やかしで問い合わせているんですかね?

それとも、こちらを警戒しているのでしょうか?

本当の使い道を隠してもいいことないですよ。

例えば、この地域ではお店を営業してはダメとか、店舗はいいけど事務所はダメ、

自分で使う倉庫はOKでも営業用の倉庫はダメとか、いろいろ制限があります。

とある地域では民泊物件には「地域の水道を供給しない」と聞いたことがあります。

 

税金で言えば、自宅としての活用であれば登録免許税が半額になることがありますし、

海外居住者売主の場合は、用途次第で源泉徴収税の有無に繋がります。→※買主に請求が行きます

 

用途でいろいろ変わります。ご用心ください。

査定の話・・・たまにあること

以下、不動産の売主がご年配のときにありがちな話です。

 

不動産売却の査定依頼があって査定書を作成し、所有者と対面して説明を行った後日のこと。

私へ電話がかかってきて、そのご子息から

「査定書を見ました。その査定額で買ってください。」

と言われました。

 

しかし、これは市場で売りに出す場合の査定であって、

私は買取りをしていない旨をご子息へ伝えると、

ハシゴを外されたような残念なリアクションを受けました。

 

特殊需要が期待できたので、その査定書には【通常の査定額】と【上振れを狙えるであろう価格】の2パターンを記載し、

市場で高く売るコツを書いているのですが・・・

聞けば手元に査定書があるというではないですか。査定書をしっかり読まずに早とちりしたのでしょう。

※通常、私の査定書はご年配の方にも読みやすいように大きな字で印字して、簡潔にまとめています。

 

残念なリアクションを受けて電話を切られそうになったので、すぐさま話を続けました。

 ・不動産会社の買い取りは、買い叩かれる傾向にあること。

 ・不動産会社が買い取って何をするかというと、最終的には一般消費者へ売って儲けるということ。

 ・不動産会社が利益を出すためには、安く買って高く売る必要があること。

 ・以上を踏まえると、不動産会社に売らずに市場で一般消費者へ直接売った方が、

  仲介手数料を支払っても手元に残るお金は多くなるはず。

こう伝えると話を聞いていただける態度に変わりました。

 

親やその先代から受け継いできた不動産を、無意味に安売りするのは見るに堪えないですよ。

その果実は無関係な第三者ではなく、故人から受け継いだ人が受け取るべきだと考えています。

親から相続した土地の売買代金を現金で受け取り、そのまま持ち帰って仏壇に報告するご年配の方がいましたが、

私もそのような感覚を持っています。

正直、情報格差を利用して私が儲けようと思えば安く買い取れそうなケースはたまにあります。

でも、なんか無理です。普段は見えないものを信じないのですが、故人の視線を感じます。

 

営業マンや商売人・投資家等を経験していないと、儲ける仕組みはなかなかイメージ出来ないですかね。

例えば、

 ・○○の先生やセミナーへお金を払って勉強するかを検討する

 ・○○で本当に儲けている人が教えているなら、何故こんなに手間をかけて人に儲ける手段を教えるのか?

 ・○○で失敗した生徒・受講者から逆恨みされるリスクを背負ってまでやることなのだろうか?

 ・もしかして本当は○○で儲からないから「○○を教えるビジネス」で利益を出しているのではないか?

営業マンだったら、畑違いの分野でも、こういう二次的思考の結論に至ろうかと思います。

ただし、二次的思考に染まったら素直さが失われると思うので、どっちが幸せなんでしょうね。人それぞれですかね。

 

◆最後に、なんか買取業者のことを悪く書いたみたいですけど、

不動産会社へ買取り依頼する売主の大きなメリットと、買取業者が存在している価値はありますよ。

 

①すぐにお金が必要で一刻も早く現金化したい

 → キャッシュが潤沢な業者さんでしたら可能です。

   登記に不備が無ければ2日以内で契約~決済~所有権移転まで出来るのではないでしょうか。

   取引関係者「全員」が即行動を起こせば1日で出来るかも知れません。やったことがないので分かりませんが。

    市場で売るとなれば最短2カ月ぐらいはかかります。

   「物件調査~広告~契約~融資本審査~融資の実行&所有権移転」といった流れになります。

 

②売るのが難しい不動産を買い取ってもらえる可能性がある

 → ややこしい権利関係の整理、大規模の土地では価格が大きくて売れないけど小分け(分譲)にしたら売れる土地、

   接道をクリアできるか怪しい土地等、リスクや手間を取る代わりに安く買い取って、

   諸問題を解決後に売却益を得るという不動産会社のメリットがあります。

 

こういったパターンであれば、みんなWin-Winです。

特約から察し

賃貸にしても売買にしても、私は他社さんと共同仲介をガンガンやっています。

取引の主導権を握りたいので、重説・契約書は基本的には私が作成しますが、

たまに他社さんの契約書を使うケースがあります。

そういう時の楽しみの一つが、契約書の内容を見ることです。

 

特に特約条項に見慣れない文言の条文があったときは、いろいろ察してしまいます。

こんなトラブルがあったからこういう文言を入れたのかな・・・という想像です。

 

 

(動物・昆虫等の駆除)

第6条 本件建物・敷地内におけるネズミ・ハブ・鳥等の動物、アリ・ゴキブリ・ヤスデ・蜂の巣の発生等の

動物・昆虫等の駆除は乙にて行うこととし、甲は対応しないものとする。

ただし、シロアリの発生については特約条項第3条の通り甲にて対応するものとする。

 

例えば、古民家賃貸の特約でこんな文言があったら、

「本土から来た入居者が、やんばるの自然の洗礼を受けてひと悶着あったのかな?」ということが読み取れます。

ちなみに、これは私が作ったやつです。

本土から来た友人がアパートのベランダでアフリカマイマイ(黒くてでかいカタツムリ※画像検索注意※)

を初めて見て衝撃を受け、管理会社へ駆除の連絡をしたという話が頭にこびりついていたのと、

実家で受けてきた数々の自然の洗礼を思い出して、こんなグロテスクな特約を作りました。

自然現象まで貸主は責任を取れません。

やんばるは自然に囲まれているので仕方がないことです。

 

 

(本物件の改変)

 本売買契約締結後から本物件引渡しまでの間は、

売主・買主はお互いに相手方へ無断で本物件に改変を与えてはならないこととする。

※売主が万が一、買主へ無断で本物件に改変を与えた場合は「契約不適合(契約条項第13条)」

または「(一部の)債務不履行(契約条項第15条)」と見なされるおそれがありますのでご注意ください

(例:土地の掘削・樹木の伐採・リフォーム・塗装等)。

 

これも私が作りました。

中古一戸建ての売主が、良かれと思って室内の壁を「買主へ無断で」塗装してしまったことがありました。

その時は買主が特に異議を述べることなく取引出来たので助かりましたが、冷や汗をかきました・・・

 

 

他社さんの特約で一番好きなのが、

「借主は貸主との交渉で、弁護人以外の代理人を立ててはならない」という趣旨のものです。

ここから読み取れるのは、「怖い人を連れてこないでね・・・」というメッセージです。

査定の話

不動産屋に仲介手数料を払うのが嫌だから・・・

不動産屋は信用ならないから・・・

 

という理由で、個人間売買を選択する売主様が一定数いらっしゃいます。

最近また安売りしてしまった事例を耳にしました。

売ったご本人は安売りしたことに気付いていないと思われますので、

このまま一生気付かない方が幸せに過ごせるかと思います。

 

世の中いろんな不動産業者・営業マンがいますが、特殊需要を知っている人は、相場より高く売ることがあります。

以前、100~200万円ぐらいじゃないと買わないんじゃないの?と馴染みの同業者・投資家みんなが口にする土地を、

急ぐ必要が無ければ特殊需要に賭けて1,000万円で売りませんか?と売主に持ち掛けたことがあります。

300万で買付の打診がありましたが断り、結果は売出しから1年半ぐらいかけて750万円で売れました。

このように私みたいな不動産屋に任せて良かったケースも、もちろんあるわけです。

ちなみに、他社に先を越されたので私はこの取引には絡んでいません(›´ω`‹ )

徳を積んだと思って来世に期待します。

 

特殊需要の種類はいろいろありますが、狭い世界の出来事なので、一般的には知られていない情報です。

私は物件査定をする時に何らかの特殊需要は無いかを考えます。

売主の事情・経済状況を聞いて早く売るべきか、時間がかかりがちなので売主に胆力があるか、その辺も考慮しながら、

高く売る勝負ができると思う物件はそう提案しますよ。

安く売り出して早く売れた方が仲介手数料をいただけるので、私にとってはその方が都合がいいのですが、

高く売れる可能性があることを黙っておくことが出来ません。

 

世の中いろんな不動産屋がいます。個人売買を選択するかどうかはご本人の自由ですが、

査定ぐらいは何社か不動産屋にさせた方がいいと考えます。大体が無料ですし。

では、どの不動産屋に査定を任せるか・・・

 

① 自分の眼力に自信があるなら、不動産屋の広告文やブログ等を見てこれはと思う業者を選定。

② 自分の眼力に自信が無いなら、3名の信頼できる人にそれぞれ不動産屋を1社ずつ紹介してもらう。

③ ①と②をミックス

 

こんな感じで検討してみてはいかがでしょうか!

 

地形を事前に知りたい

山や高低差のある物件を預かることが多いのですが、

現地を見る前に、ネットである程度の地形を把握できますよ。

 

山の土地は実際に現地を訪れると、

「思っていたよりも使える面積が小さかった」

とがっかりすることがよくあるはずです。

 

そんな残念な気持ちになる案内を少しでも減らしたいので、

見学前にある程度の地形を把握することを推奨します。

以下は、その足掛かりになる情報です。

 

●地形図、航空写真

当WEBサイトでは、高低差のある物件は等高線の入った地形図や

航空写真をダウンロード出来るようにしています。

等高線は5m毎と2m毎のパターンが多いのですが、私は図面の右下に

「※等高線は高低差5mを表す」というような表現を記載しています。

 

地形図は縮尺がないのと土地の境界線(筆線)がないので少し不便です。

航空写真はその点をクリアしています。役所の税務課で誰でも買えます。

窓口で等高線を入れてくださいとリクエストすると入れてもらえます。

 

等高線入り航空写真の実例

 

 

 

●地理院地図、沖縄県地図情報システム

ネットで「地理院地図」や「沖縄県地図情報システム」を検索して触ってみてください。

等高線の入った地図が見られます。

やんばるだと地理院地図で1970年代の航空写真を見ることが出来ます。

東京・大阪は戦時中の航空写真が見られます。

 

 

●グーグルアース

地形を知りたいならグーグルアースが最強です。

初期設定では2D(平面)で地図が現れますが、右下の3D(立体)をクリックすると、

下のような立体的な土地の姿が見られます。

大まかに地形を把握するならこれが一番です。

 

 ◆個人的に一番好きな機能が、マウスのカーソル(矢印)の位置の標高が出るところです。

  画像の★マークの位置がカーソルを合わせたところですが、画面の右下に標高が記載されています。

  精度を100%信頼しているわけではありませんが、大まかな地形を知るのには十分な機能です。

売地の位置にご用心

「数年売りに出している土地が、実は違う場所だった」ということがありました。

私を含め、複数社が同じ土地を広告に出していますが、みんな位置を間違えています。

この記事を書いている時点で、私だけが先に正しい位置に地図と写真を訂正しています。

 

そもそも、売主がこの土地の位置を間違えて把握していたようです。

測量を入れて境界杭がしっかりあり、草刈りもされて、

元付業者からここが売地ですと案内されたら、そりゃあ疑いませんよ。

 

何故間違えたかは分かりませんが、付近一帯がすべて手付かずの原野で、

土地の形もみんな似たような形状ですから、気付きにくい状況ではありました。

しかし、測量した方は大丈夫ですかね?何故そこへ杭を打った?(笑)

 

ちなみに、測量をする方にも色々いらっしゃるのですが、

土地取引では「土地家屋調査士」が行った測量でなければ法的な裏付けはありません。

万が一境界トラブルがあっても、裁判では土地家屋調査士が行った測量成果を採用します。

「測量士」が行った測量は目安にはなっても、土地取引の世界では有効ではありません。

でも、測量士でも技術的には問題ないはずです。

ほんと、何故そこへ杭を打った?(笑)

 

この間違いに気付いたきっかけは、航空写真とにらめっこしていた時でした。

木の位置に違和感があったのでまさかと思い、現地を巻き尺で図ると予感は的中。

土地の位置が1区画分ズレていました。

やはり不動産業界では人の話を鵜呑みにしないことは大事ですよ。

売主の言うことですらです。

必ず自分で一次情報に当たりましょう。

 

今回は取引に至らないうちに気付いてよかったですが、

お問い合わせいただいたお客様には迷惑をかけてしまいました。

以後気を付けます。

譲渡日の話

とある土地の条件付所有権移転仮登記(条件 農地法第5条の許可)を

本登記にした場合、税法上では譲渡日をいつと見なすのか?

 

最近関わった案件でそのようなことがあったので調べました。

いつから土地を所有しているかで、売却後の譲渡所得への課税額が倍ぐらい変わります。

長期譲渡20.315%、短期譲渡39.63%ですからね(※2022年6月現在)。

本登記を行ってから所有期間を起算するとなると、

本登記後に即売却したら譲渡益の39.63%の税金を払うことになるので、

今後の売却時期や売却額の判断に大きな影響を及ぼします。

 

税務署に電話で確認したのと、税理士によるネット記事で確認したところ、

「物件の引渡しがあった日」が所有期間の起算日(譲渡日)でした。

今回のケースでは「土地売買契約の締結・代金決済・土地の引渡し」が

同日だったので、その日で間違いなさそうです。長期譲渡20.315%に該当しそうです。

 

しかし、本当にそうなの?という不安があります。

税務署という一次情報に当たりはしましたが、それでも100%安心できないのが不動産屋の性です。

官公庁に限らず、これまでに何度も落とし穴がありましたので。

※損害賠償に至るような取引の失敗はサラリーマン時代を含めてこれまでありません

 

売主様ご本人から税務署や顧問税理士等に直接確認していただいて、はじめて安心できると思います。

◆「評価額」にご用心

私を悩ます「評価額」という言葉があります。

 

役所から毎年届く固定資産税の納税通知書に書かれている「評価額」というやつです。

役所の窓口で取得できる固定資産評価証明書・公課証明書にもその「評価額」が記載されています。

不動産業者の立場から言うと、「評価額」という表現は大きな誤解を生み、不動産の売主が損をすることがあるので、

表現を変えるべきだと考えます。

 

以下は実例ですが、「評価額」と売却額に大きな乖離がありました。

結論から言うと、3,900万円で売却できた土地は、「評価額」が1,113,542円でした。

実に35倍の開きがありました。

このケースでは、かつて家が建っていた土地を更地にした後、長年畑として利用していました。

台帳地目・登記地目は「宅地」ですが、課税地目が「一般畑」となっているので、

「評価額」がめちゃくちゃ安いというわけです。

しかし、少し整地すれば家が建つ土地で、法的にも建築が可能でしたし、

住宅街にポツンと取り残された更地で需要が旺盛な地域だったので、

過去の取引事例よりも少し高い価格で売れました。

 

で、何が問題かと言うと、役所が言う「評価額」を【売買するときの妥当な金額】

と誤解する方が世の中にはいるということです。

 

●売主サイドの誤解が生む悲劇

 誤解したまま売ってしまうと、大損します。

上記の例で1,113,542円で土地を手放したとしたら、

本来得るべきだった金額を知った時には愕然とするでしょうね。

何せ35倍ですからね。

 

●買主サイドの誤解が生む悲劇

 個人間取引で多いのですが、「役所の評価額が●●万円だから売主の売却希望額●●●万円は不当に高過ぎる!」

と思って私にこの額が妥当かを相談してくる方がたまにいます。

相談者に「市場に出すとそのぐらいの価格で売れそうだから妥当な金額だと思いますよ」と伝えると

納得いかない様子で帰っていく方もいました。

その方は自分に都合の良い回答が得られなかったので「やっぱり不動産業者はクソ!」と思っていたかも知れません。

役所の「評価額」が妥当でしょと言うなら、墓地はゼロ円、宅地に転用できる畑は農地価格で取引されるべきです。

それっておかしいですよね?

 

◆このバグを突いて儲けを狙う人が世の中にはいるので気を付けてくださいね。

不動産業者は基本的には消費者である買主保護に動きますが、このようなケースでは売主保護に動きますよ。

情報弱者から情報格差を利用して儲ける話は見過ごせませんよ。

仮説と検証

不動産取引の調査で頻繁に官公庁へ行くのですが、質問の仕方に注意しています。

 

分からないこと(または明確ではないこと)を調べに行くのですが、

ある程度のことは自分で仮説を立てて、「私は●●●●と▲▲▲▲の理由で◆◆◆となると認識していますが、これで当たっていますか?」

と聞くようにしています。

質問に応じる方すべてがその業務を熟知しているとは限らないからです。

数年で部署の移動があったり、経験不足の若手さんがいるので仕方がないと思いますが。

 

以前、接道する道路の種類について、「1号道路」という認識で某官庁へ訪問し実際にそうだと窓口で回答を得ましたが、

別の窓口対応者が、とある業者さんに対して「43条但し書き道路の許可が必要」と回答したということで、

ちょっと業務に支障が出ました。

結果、後者の窓口担当者に会って確認したところ、やはり1号道路でした。

 

先日、別の官庁の窓口で必要書類を聞いて、後でネットで再確認したら、

窓口の回答が適当だったことがあったので、気を引き締めました。

 

窓口の担当者と対面していろいろ話を聞いて、それがガセネタであったとしても、

不動産取引においては「それを見抜けなかった不動産屋が悪い」となりますから、

自分の身は自分で守りましょう。

世の中は理不尽だし、落とし穴、地雷だらけです。

 

後輩には口酸っぱく言ってきましたが、

何でも鵜呑みにするわけではなく、相手任せにせず、必ず自分で裏取りしましょう。

自分が取引の全体像を描いて、自分主導で進めないとケガする世界です。

ほぼ表面化しないであろうリスクまで説明

先日、いつもお世話になっているお客様が物件を買うということで、

価格が妥当か見て欲しいとの相談がありました。

その流れで留意点を6つ洗い出したところ、少し驚いたご様子でした。

 

特に自然公園法の第2種特別地域の制限、「建築物は道路境界・隣地境界から5m後退を要す」

という点を知らない不動産屋もボチボチいると思いますよと話すと、

「じゃあ売る人はそういうのを知らない業者に任せた方がいいね(笑)」とのお言葉をいただき、二人で笑いました。

ちなみに、その物件は再建築時に5m後退の制限を受けると、建坪15㎡(4.53坪)しか活用できない物件でした。

こういう物件は既存建物を極力延命させる努力をするか、隣地を買い増しして活用可能な面積を増やさないといけませんね。

 

上記は将来間違いなく表面化するリスクですが、ほぼ表面化しないであろうリスクまで説明することによって、

お客様をかえって不安にさせ過ぎていないか?とか、確率の低いリスクまで説明することによってお客様が引いてしまい、

この物件で楽しく暮らすであろう未来を潰してしまうのは正しいことなのか?とよく自問自答しています。

しっかり説明しますけどね。

 

取引で損をするとしたらお金を出す側の買主の場合が多いですから、

基本的には買主保護の考えが強いです。しかし、こうも思います。

しっかり説明して私が損害賠償責任を負うリスクが無くなれば

安全な取引ができて、結果的に売主・買主も守れるという考えです。

やはり、安全な取引の実現が不動産屋の存在意義ですよ。

 

【法人売主様へ】

ちなみに、法人売主と個人買主の取引の場合は、

消費者契約法で法人売主側に「契約不適合責任」が認められる可能性がありますので、

それを踏まえて、どの不動産屋に仲介を任せるかをしっかりご検討くださいませ。

 

【余談】

更地クエストは一旦打ち切りにします。

とても有難いことに、いろいろ依頼が増えてきました。

6月~11月2週目まで忙しくしていたので、寒くなるし冬はゆっくり生きようと思っていたのですが、

2期目の今期までは税金の絡みでボーナスステージだということに気付き、4月決算までガッツリ案件を取りに行こうと思います。

価格交渉はトレードオフ

価格交渉はいろいろ注意を要します。

交渉事はトレードオフですから、買主様にも腹を決めていただくことになります。

何かを得るためには何かを失う覚悟が必要です。

 

①今後一切の話を断られるリスクがある

→売主の中には価格交渉に気を悪くする方がいます。

交渉はやめて満額で買うと後で言っても、取引自体を断られるおそれがあります。

価格交渉に失敗しても買うお考えでしたら、不動産屋の担当者に「価格の相談をしても大丈夫そうな売主か」

をあらかじめ聞いた方がいいですよ。

もちろん、破談のリスクを負って交渉に当たる覚悟が出来ていれば、強気の交渉でもいいと思います。

 

②物件のマイナスポイントを挙げてそれを理由に価格交渉をする

→これは、諸刃の剣です。具体的なことを挙げて説得力がある一方、

売主の立場からすれば、相手の弱みに付け込む印象を与えかねません。

私なら、具体的な活用方法を説明して、物件を大事に使う旨をアピールします。

ただ、それを姑息と捉えて良く思わない売主もいると思いますから難しいです(笑)

 

③見学前に価格交渉

→これは不動産業者としては避けたいところです。

売主が腹を決めて交渉に応じると決断したのに買わないとなると、

売主としては、はしごを外された感があります。

不動産業者も売主からの信用を失います。

決断には売主の様々な考え・思いが詰め込まれていますから、

話に具体性もない状況で、いくらまで下がりますか?という質問には応じていられないですよ。

なので、基本的には見学して気に入っていただけてから(話に具体性が出てから)でないと価格交渉に応じていません。

価格交渉を行う際は買付証明書(購入申込書)をご提出いただいています。

 

④価格交渉に加えてその他条件の交渉

→これも避けたいところです。価格交渉か、その他条件の交渉か、

どちらかを一方を選んだ方がいいと思います。

あれもこれも要求すると売主から今後一切の話を断られるリスクがあります。

もちろん、そのリスクを負う覚悟が出来ていれば、強気の交渉でもいいでしょう。

 

どのように交渉するかは各個人の考えによりますし、

売主の性格によって対応を変えるのも作戦の一つかも知れません。

強気の交渉か、下手に出て交渉するか、いろいろありますね。

 

私がもし価格交渉をするなら、強気の交渉です。

「〇〇〇万円なら買う。ただし売主による測量は不要、契約不適合責任は免責。」といった感じです。

安く買えるならば、大勢に影響を与えない事柄には目をつぶり、売主の負担を減らす提案もします。

もし希望額まで下がらなければ見送ります。

確実に欲しい物件なら満額で買います。

 

大らかな時代の物事の後始末

過去の大らかな時代の物事の後始末をやることが多いです。

いろんな矛盾を解決していくのが不動産屋の仕事ではあるのですが、

法的な話とは別に「個人の感情」が絡んでくることが多いので、

ほんと、一筋縄ではいかないことだらけで疲れます(›´ω`‹ )

 

いまを生きる皆様、子孫への宿題を残すのはやめにしましょう。

未来の世代が難儀して苦しむことに繋がります。

どんなことがあるか例を挙げます。

 

①越境

・古くからある集落の古いブロック塀は越境していることが多いです。

どちらか一方が越境の場合や、お互いに越境し合うパターンもあります。

・お互いに納得して新たに境界を決めたが口約束だけで済ませて分筆しなかったがために、

公図・登記簿に反映されていないケースが過去にありました。

境界を決めた当事者は既に全員故人であり、非常に頭を悩ませましたが、わずかな面積でありましたし

わざわざ分筆登記せず越境部分を事実上買い取った形にして解決しました。

双方の遺族がとても紳士的な方々でしたので穏便に解決出来ましたが、

ちょっとでもごねる人が関わったらまとまらなかったと思います。

・過去に国道の範囲に建物が乗っているのを目撃したことがあります。

取引に関わったわけではありませんが、怖くて考えたくもないです。

・地面に接するところだと分かりやすいのですが、見落としがちなのが空中越境!

アルミ格子・エアコンの室外機・屋根のひさし等にも注意を払う必要があります。

 

②相続登記を行っていない

・不動産を売りたくても相続が出来なくて売れない・・・そんな悩みを抱えている方は多いと思います。

昔の人は兄弟姉妹が多く、移民で海外へ渡ったケースも多いので、

時が経つほど相続人が増えて散らばるので、話がまとまらなくなります。

相続人の数が5人ぐらいから「もしかすると話がまとまらないだろうな・・・」という予感がしてきます。

20名以上なら、もうまとまらないでしょう。相続人本人だけではなくその配偶者・子らの意向

もあったりしますから。

・相続登記の義務化が2024年をめどに法整備されそうなので、解決できる不動産が少しでも増えたらと願います。

 

③所有権移転登記を行っていない

・口約束だけで土地を売買したり、酒と土地を交換したという話を聞いたことがあります。

・相続した自分名義の土地に誰のものか分からないお墓がいっぱい・・・というケースを複数見てきました。

 まだ誰のお墓かが分かればいいのですが、所有者不明のお墓は非常に困ります。

遺族・関係者が長年訪れていないお墓は草木が伸びたり荒れているので見れば分かります。

法的手続きを踏めば改葬できるのですが、誰のものか分からないお骨を改葬するのは気が重いですよ。

 

④旧建物の滅失登記を行っていない

・このケースも非常に多いです。一見更地でも登記上は建物が残っているので、

建築するときに建ぺい率に影響が出るおそれや、さいあく建築確認が

取れない・融資が下りないことも予想されます。

・建物を取り壊した経緯を知る人物が全員亡くなっていた場合、

滅失登記はかなり難儀しますよ。滅失登記の費用も安くはありませんから、

子孫に余計な出費をさせることになります。

 

 

◆祖先がこういったトラブルの種を残したのは情報・知識が無かっただけで意図的ではなかったでしょうし、

承知していたとしても、どうしようもない理由があったのかも知れません。

今の時代は情報・知識が蓄積されていて、それらに誰でもすぐにアクセスできます。

解決方法もネットに転がっていたりしますよ。

このブログを見ている方は不動産に興味がある方や同業者しかいないでしょうから

情報が届く方が限られていると思いますが、こういう情報を蓄積していくのは社会的意義があると勝手に思っています。

 

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